講談で伝えるみ教えの世界 高山泰秀氏(龍王山一松寺)

躍動感溢れる言葉とリズム

講談で伝えるみ教えの世界

ボンズナビ事務局が掲載寺院の中から気になるお坊さんをご紹介する、「お坊さんPickUp」。今回は、講談を取り入れた独特のスタイルで教えの世界を語る、一松寺(広島県、浄土真宗本願寺派)副住職の高山泰秀氏をご紹介します。

高山泰秀氏の講談説教の様子

高山泰秀氏インタビュー

――これまでのキャリアを教えていただけますか?
高山 高校卒業後に大谷大学の真宗学部を出まして、その後、浄土真宗本願寺派の中央仏教学院に通いました。でもその間、1年間ほどバックパッカーでインドを巡ってたんです。

――バックパッカーですか?
高山 はい、仏教史跡を巡ったり。なかなか大変でしたけど、貴重な経験をすることができましたね。

――インドでのお話も興味ありますが、日本に戻られてからは?
高山 中央仏教学院を卒業してからは、大阪のとあるお寺で法務員を10年ほど続けていましたが、その間に(浄土真宗本願寺派附設の)宗学院別科に2年ほど通い、本願寺派布教使の資格も取得しました。その間に結婚して、現在7歳と1歳半になる子どもがいます。今は大阪の自宅で妻と子供の4人暮らしです。布教使の資格を得てからは、ご縁をいただいた先での布教が主な活動ですね。

ラップの素質を活かし、Youtubeで独学

――この「講談説教」を始められたきっかけは?
高山 大阪に千鳥亭という講談の寄席がありまして、そこに好きでよく通っていたんです。もともと浪曲などが好きだったものですから。というか、私は以前ラップをやっていまして。

――ラップですか?失礼ながら、全くそんな風には…
高山 そうなんですよ。こう見えて、実はラッパーだったんです(笑)。だからお説教もラップで出来ないかなーとずっと考えていたんですが、ちょうどその寄席でやっていたのが、西山本願寺の合戦モノでして。それを聞いたらすごく馴染んだんですよね、講談のスタイルとお説教の世界が。それから講談のことを詳しく調べてみたら、もともと真宗の説教にルーツがあると知って、ますます「これは面白い」と。

柔らかな物腰と明るい笑顔が印象的な高山氏。

――なるほど。それからどうやって講談を学ばれたのですか?どなたかお師匠の下で?
高山 いいえ、誰かの下で学んだわけではありません。今は便利な時代ですから、Youtubeで探せば色んなのが出てきます(笑)。こうした親鸞聖人にまつわる講談の脚本は、探せばたくさんあるんです。

――Youtubeで独学ですか!その動画を見て暗記していくのですか?
高山 いえいえ、そんな暗記だなんて私には無理ですよ(笑)。もちろんお話の骨格は元々の脚本からいただきますが、セリフや表現の細かなディテールについては自分の言葉に置き換えて手を加えます。今でも一日2回は口にかけるんですけど、200回ぐらいすれば覚えられますよ。

言葉とリズムで醸し出す豊かな世界

――最後に、高山さんが思う講談説教の良さとは?
高山 そうですね…。どの宗教にも「よろこび」はあると思うのですが、そのよろこびは専門的な学問用語では伝えきれないものがあると思うんです。私が思うに、聞き手の想像力をくすぐるというか、皆で同じものを見て聞いていく上で、その接着剤となるのが「音楽」なんじゃないかと。人と人の心をつなぐリズムとか音楽とか、そういう言葉を超えたもの。

――確かに、そういう部分はありますね。
高山
 そういうところから、ギターで歌ったり、音楽的なアプローチをされるご講師の方々もいらっしゃいますけど、でもお説教となるとやっぱり音楽だけでは描き切れない。最後はどうしても人間の言葉が必要になると思うんです。そうやって言葉をメインとしながら、リズムや音楽がそれを支えていく。そうなると講談というスタイルしかない、と私は思っています。
お参りの方々がみんなで、30分も40分もずっと物語の中に没頭できる。言葉のリズムに乗せて、仏様の願いやぬくもりをみんなで味わい共有していくことができる。これが講談説教の素晴らしさだと考えています。

――なるほど。今日はありがとうございました。益々のご活躍を期待しています。
高山
 ありがとうございます。現在、私が運営するYoutubeチャンネル「過疎に負けない一松寺チャンネル」にて、私の講談説教を配信しています。今後はお寺での活動の様子なども配信していきますので、ぜひチャンネル登録してみてください。

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